JA1ACB こだわり無線塾



再生検波と超再生検波
2009/5月 NEW!

 何を今更寝呆けた事を言ってるんだと非難轟々になりそうだが、飽く迄も発振器つまり水晶発振器やシンセに使われるVCOなどの動作状態を理解する為の重要な鍵が含まれている事を念頭に置いて読んで頂きたい。それでは先ず最初に再生検波なんか遠の昔(?)に完全に理解していると自負されておられる方に質問:

(1)プロッピングと言うのはどの様なものですか? 原因は? 対策は?
2) フリンジハウルと言うのはどの様なものですか? 原因は? 対策は?
3) モーターボーティングと言うのはどの様なものですか? 原因は? 対策は?
4)ヒステレシスは如何して発生しますか?(1)とどの様な関係がありますか?
(5)ブラッシングは何故発生しますか? 回避する方法はありますか?
6)  半導体のBJTやFETが再生検波に向かないのは何故ですか?
7)通常の発振と再生検波の発振と何か差異がありますか? あるとすれば何処?
8) 周波数安定度を増す為に水晶を帰還ループに使った再生検波が不可能なのは何故?
9)球の等価雑音抵抗は再生検波の場合でも関係ありますか?
10)プレート検波が再生検波に使われないのは何故ですか?

まだまだあるが、余り揚げ足を取ると鼻から毛嫌いされて読んで貰えないので本題に入る事にしよう。勿論再生検波が完全に理解されないで超再生検波をやろうとすると、矢鱈と雑音の多い物が出来上がってしまう事になる上、超再生は雑音が多くて堪らないと言う捨て台詞を吐く事になる。確かに超再生検波は雑音が多くしかも選択度が悪いので現在は特殊な用途にしか使用されないが、雑音の多い原因がどこから来るのか、これから順次説明する再生検波の諸問題を十分理解出来れば、容易に減らす事が可能である。この超再生の雑音が1)のプロッピングと極めて大きい関係がある事を念頭に置いてこれからの話を読んで頂きたい。

 さて良く考えないでも信号を受信する時、先ず不要の信号を切り捨てて、必要な信号を増幅し、検波復調してから更に増幅する、とすると何故再生検波と言う不安定な物を使うのかと反省するのが当たり前で、そこで容易に高利得を得るため一度周波数を変換して増幅をと考えられたのが勿論スーパーへテロダインでキョウビ再生検波やオートダインと言った周波数変換段を持たないストレート受信が単なる興味の対象にしかならなくなったのは当然の事である、しかも再生つまり正帰還で利得を稼ぐと言うのは、球が極めて高価な時代の産物であったのは充分理解できる、そう言えば同じ球、殆ど増幅段であるが、を高周波増幅、IF増幅や低周波増幅に二度使うリフレックスやスーパーリフレックスなんて受信法があった。また初期のスーパーヘテロダインもIF段が抵抗結合で単にゲインを稼ぐだけと言う方式のものもあったし、ヨーロッパでは普通に放送されていた長波は一度IFに変換する場合463KHz(最近の標準の455KHzになったのは戦後である)に持ち上げる事になるが、この場合はインフラダイン(1926年のThe Radio誌による)と呼んでいたようである。従って現在のようなアッパーヘテロダインは意外と古く、又長波帯で可変周波増幅をするのは部品、特にギャング・ヴァリコンが巨大になり実用的でなかったからである。閑話休題で、戦時中からの馴染みの3球ラヂオから尾を引いて再生検波で短波放送を聴きだし、作ったオートダインは100台を超し、少しでもその軌跡を残しておこう、又最近超再生検波が見直されている事とも関連がある。理想の再生検波は再生度を強くして行く時雑音が「サー」から次第に「ザワザワ」となり「ザー」と発振し、発振が強くなると「シー」と言う一種の飽和状態の音になり、しかもこの再生から発振への転移点が何時も一定で又発振から再生に移る点も全く同一点でなければならない、又周波数を変えてもこの転移点が変化しない、再生度の変化で周波数が変化しない、再生度の加減及び同調周波数を動かす時に雑音の発生が無い事、以上の事が出来れば万々歳なのであるが、理論的に再生度による周波数の変化は逃げる事は不可能で、又転移点が周波数に依って変化するのを避ける事も極めて困難である。再生度の加減に可変抵抗器を使うと摺動部から発生する雑音を逃げるのは極めて困難で、特に電流が流れている時は不可能に近い。一方同調は通常ヴァリコンで行うがこれはスプリットステイター型或るいはバタフライ型を使用すれば(5)で問いかけたブラッシングつまりヴァリコンの回転時の雑音を完全に回避出来る。同様に考えれば再生度の調整をヴアリコンで行うのも一方法であるが周波数決定の同調回路に全く影響を及ぼさない様にするのは至難の業である。

 (1)のプロッピングは再生状態から発振状態に移る時、発振状態から再生状態に移る時ぽんと非連続的に状態が変わる事で、(4)のヒステレシスと密接な関係がある。

(続く)