JA1ACB こだわり無線塾



プレート高周波チョーク


 チョークはチョークコイルの略で日本語で言うと塞流線輪、インターネットや雑誌の広告で見るチョークトランスとはどの様な働きをする物か確固とした定義が知りたいと思っている。小生の知る限りトランスはトランスフォーマーの略で電圧の変換、電流を電圧に変換、イムピーダンスの変換等に使われるコイルとコイルを磁束で結合した物で、チョーク(塞ぐ)してしまったトランスでは二次側に出力が無いし、従って二次側のコイルも必要が無くなって来るので、結局はチョークコイルになるか・・・hi!

 先述したがチョーク自身の持つ直列共振点は非常に厄介な物で、小生も813や4E27のアンプではハニカム捲のプレートチョークで何回となく煮え湯を飲まされているのでコリンズの物の紹介共々ローレヴェルに使用される物も含めてイムピーダンス特性を採ったので一寸紹介をしておこう。小生の手許にあるイムピーダンスアナライザーが其れこそ恐竜時代のHP 4815Aでペン書きレコーダー出力しか出ていないのでA/D変換をしてからHP R/332のコントローラーでグラフにすると言う手間を掛けることになった。其の上HP 4815Aは周波数を早く動かすとロックが外れてしまうのでドライヴに使用したHP 3335A をそろそろとスウィープするプログラムを追加、あれやこれやで用意に2週間程掛かり、そこで測定を始めた所HP 3335AのN-dividerの2個のECLがぶっ飛んでしまい、このICが滅多矢鱈と入手が困難で、致し方なく急遽2トーンジェネレーターに使っていた物と交換して測定をする事にした。そろそろHP 4815Aをブチ捨ててHP 4193A(HP‐IBが使えるのでズボラ向き)に入れ替えたいと思っているが、マルの方の問題もあり何時になるか。

 先ずHP 4815Aのプローブ、クリップ付きアダプターのイムピーダンスの測定結果を図28に示しておく。実際θの読みから言っても純粋な容量、約1.6pFと考えて充分である。写真群は手許にある各種のチョークを洗い浚い引っ張り出したもので、それらの内ナショナルやジェームズミレンの1mHや2.5mHは昔懐かしの代物であるが、これ等の直列共振点には可也泣かされた記憶がある。

昔懐かしの1mH、2.5mH チョークコイル
ナショナル、ジェームズミレン


左の大きいのから
○208U-10
○オーマイト Z-14(30L-1他)
○548L-4A
○Sライン/KWM-2

 測定結果の説明は図29の夫々の下に書いてあるが、一般的にイムピーダンスが∞の所、つまり並列共振点はHP 4815Aのプローブの入力容量約1.6pF及び接続線の浮遊容量との同調点で、並列に入る容量で大幅に変化するし、同調回路を並列に入れると可也高い周波数に移ったり、物によっては無くなってしまう場合もある(当たり前だが)。従ってチョーク自身に直列共振点や並列共振点が無ければ、チョークを流れる電流はE/ωLとなりチョーク自身の持っている損失抵抗つまり捲線の高周波抵抗と表皮効果に依る抵抗の増加分、そうしてボビンや捲線の被覆の誘電体損失を直列抵抗に換算した物と掛け合わせた値が損失電力となる。先述した様に208U−10ではこの捲線の太さで耐えられるのかなと思う位の線が捲いてある。之に2MHzでは6Aもの電流が流れて、線が赤熱しないかと心配するほどであるが、結構使えている様で小生の取り越し苦労かも・・・。この手の高耐熱の線には昔から酸化クローム(緑色)や酸化ニックル[ニッケル](黒灰色)被膜が良く使用されているが、一般には入手が困難で結局は548L−4Aの様にプラスティック被膜線(広義でのエナメル線で、最近はフォルマール、アセタールは見かけなくなった)になってしまう。

 測定図の中に出来る事ならばωLのカーヴも入れたかったのだが、プローブの入力イムピーダンスの1/ωCも入れないと片手落ちになり、グラフが可也不可解に成ってしまうのでHP 4815Aのプローブで測定した結果のみを出しておく。もし時間の余裕があればそうして興味があれば測定グラフの上にωLのカーヴでも描いて見られては如何なものだろうか。各測定図は勿論実際に送信機に取り付けられた状態で測定したものでは無く出来る限り自由空間(?)に近付けて測定したつもりであるが、一方でこの様な測定は直列或いは並列共振点が実装とはかけ離れたものになり、結局はコムピューターのマニュアルの様に一読難解、二読誤解、三読不可解(二読と三読は逆の事もある)になる。実際SラインやKWM-2の様にシールドコムパートメントや球の近くに取り付けるとがらりと様子が変化する事は自明であるが、其れかと言って各種各様の取り付け方で測定データを採って居たのでは其れこそ「寿限無々々々」になって目の黒い内に受信機の所に到達しない恐れも出てくる。脱線したが、測定データの中にアレンブラッドリー(ブラッドレー)のソリッド抵抗を測定した物を図30にしめしておくが、数kΩ程度迄ならば電圧降下の気にならない所でパラ発振の危険性が高い場所には中々な物だと考えている。このソリッド抵抗(正しくはカーボンコムポズィション抵抗)は経年変化が極めて大きく100kΩが500kΩになっている等は良くある話であるが最大の利点は断線が無い事である。但し電流雑音が非常に大きくオーディオ周りやCN比を問題にする発振回路の中には使用しないほうが良い。ところでチョークで思い出した事があるので此処で一寸触れておこう。このチョークでも特にフェライトコアやパウダーコアを使った物は電源トランスのリーケージフラックスを拾い、其れが発振回路の様な非直線性の強い所に入っていると出力が電源周波数で変調されてしまう。図31はHP 105Bの新しいモデルで10811D型の発振ユニットを装着した物を内部AC電源で動作させた時の出力スペクトル(独逸語?)で、これを外部DC電源にすると図32の様になる。Hewlett−Packardの名誉の為に言って置くが、昔の00105−6013型発振ユニットの時にはこの様な状態にはならない。この様に非直線性の強い発振器や乗算器回路にコア入りのチョークを使用する場合電源トランスや出力トランスから出来るだけ離すかチョークを抵抗に置き換える事考えなければならない。実際CinoxのOCXOの或るモデルでは一切チョークを使ってないし、もっとうるさい話をすると、水晶発振子のリード線はデュメット、スィルヴェニア合金或いはコヴァールと言った磁性を持った物が殆どでこのリード線に出てくる電源周波数の誘導電圧に充分注意する必要がある。