JA1ACB こだわり無線塾



目     次 update
0 御挨拶 2003/11/08 0
1 測定装置の紹介 2004/05/04 0
2 何故球なのか 2003/11/08 1
3 リニアパワーアンプ 2003/11/08 1
4 1段 NFB 2003/11/08 2
5 2段 NFB 2003/11/08 2
6 エンヴェロープ帰還 2004/03/14 3
7 ア ル ト ラ リ ニ ア 2004/03/20 4
8 プ レ ー ト 高 周 波 チョ ー ク 2004/05/04 5
9 乗  算  器  T 2004/09/23 6
10 発信器の雑音 T 2005/05/04 7
11 ALCとAGC 2006/05/14 8
12 電力型高周波トランス 2009/5/03 9
13 アンテナ同調・整合装置 2009/5/03 10
14 再生検波と超再生検波 2009/5/03 11
15 RTTYの諸問題 2009/5/03 12
16 AMC (Automatic Modulation Control) 2016/2/29 13
       


御    挨   拶



 ステレン狂になって半世紀を超え、その歴史の中のCW、Phone(AM)、SSB、RTTYのDXの話は横に置いておいて、技術的な、それも昔は指をくわえて眺めているだけだった測定器群を駆使した実測データを主眼として、数年前に「CQ」誌に連載した分で書き足りなかった多くの問題点を、そしてあわよくば受信機の足元と言うか、むしろ重箱の隅を色々と穿り回せる機会を作って頂いたので、これ幸いと得手に帆を揚げて、能書きを垂れる(?)事と相成った次第であります。昔の「CQ」、「無線と実験」、「59」誌等の稿と重複する所も多々あるかと思われますが、何れにしても苦心惨憺、まともに動作するまでに何台も作っては壊し、壊しては作った機械を測定したものであり、この事をご理解頂ければ筆者の望外の喜びとするところであります。また本文中は文語体になる上、ひどい乱文になるところも多々あるかと思われますが、この点につきましても平に平にご容赦の程を、又、超極端な筆不精でお手紙にご返事申し上げる事は余り無いかと思われますので宜しくお願い申し上げます。尚個人名、局名に就きましては資料の出所を明確にする必要がある場合(独断と偏見に満ち満ちていますが)にのみとさせて頂きます。




測 定 装 置 の 紹 介

 
 かって1960年代に「無線と実験」誌に色々と書いたころは、測定器は殆ど自作で、SGもシンセ等(小生は「ナド」と読んでいる、ワープロでは大日本帝国陸軍の読み方「トウ」になっている)と言う気の利いた代物は無く、Northern Radioのマスターオスィレーター(米軍のBC221型周波数計を恒温槽に入れて大げさにした感じ)を息を殺して使ったものであった。スペアナ(Spectrumは単数形、Spectraと言う複数形は滅多に使わない)もFT241の水晶で作った50Hz幅のフィルターに対数圧縮型の電圧計を入れた物を自作、2トーンジェネレーターはMT管の12AT7で水晶発振に抵抗コムバイナー、RFの高電圧を測定する為に菊水のPV-107にSubMT管の5896や6110を整流に使ったRFプローブを作り、電力の測定をしたり、兎にも角にも馬力一点張りの時代であったが、キョウビこのような自作の測定器で出したデータ(Dataは複数形、Datumと言う単数形は滅多に使わない)等誰も信用してくれる筈はなく、勢いHewlett−Packardサマ(現在はAgilent Technologies、日本名はテクノロジーと単数形)を担ぎ出さざる得ない事になる。まず測定の大黒柱のスペアナはもちろんHP 3588Aを、SGはHP 3335Aを2台にそれぞれ1W出力のアンプ(正しくはアムプだがこれだけは汎用のアンプを使う事にした)をつけてその後にハイブリッドコムバイナーを入れて2トーンを出してやる。とここまでは月並みであるが、出てきたデータをエイヤットォーッとばかしにグラフにして仕舞おう等と言う良からぬ了見を起こす、言い換えるとRUNボタンを押せば後は勝手にグラフが出てくる、つまり昼寝をしていても宜しい事になる方式を考えたが、詰まるところ、ずぼら系超肥満志向型測定セットアップ(メーキャップだからセッタップか)と言うことにならざるを得ない。

HP 3588Aスペアナ
フロッピードライブは2DD用!!!

HP 3335A シンセ
近傍C/N比は最高

 
 スペアナもSGもプリンター/プロッターもHP-IB(GP-IB)を通してリモコンが出来るが、その為にはRMB(Rocky Mountain BASIC)が使えるワークステーションが必要で、更に将来受信機のこともやるとなるとシールドの完璧なコントローラーがどうしても欲しくなり、結局のところHP 9000シリーズのR/332を使う事とした。測定データを取り込んでグラフ(この場合は勿論ラスターダンプ)にする為にSGのアテニュエーターをDUT(Device Under Test)の出力電力で1%おきに動かし、スペアナから出てきた3次、5次、7次、9次歪量をHP 2225Aのプリンターでグラフにしてやる。と構想を大上段に振りかざしたまでは良かったが、スペアナもSGも夫々単独の周波数基準で走っている為、測定値がばらついて具合が悪いので更に張り切って低位相雑音型のHP 10811D周波数基準(何故低位相雑音型かと言うと将来受信機の測定を見越しての話からで)の入ったHP 105BとディストリビューターのHP 5087Aで全てを基準周波数にロックして測定をすることにしたが、実を言うとこの方が測定ソフトのプログラムを作るのが楽チンポンだっただけの話である。(このソフト、もしご希望があれば実費でお分けします。奇数次歪のみですが)

周波数基準
基盤付きがHP 10811D 10Mhz
オーブンのみがCINOX H130 1Mhz

周波数基準
HP-105B 周波数基準
HP-5087 ディストリビューション・アンプ



HP-9000 R/332コントローラー
これがHP-IBを通して各測定器
SG、プリンタ、ハードディスク等をコントロールしている。

HP-7959S
歪測定データはこの中にしっかり入っている。


 パワーアンプの歪の測定で最も厄介な問題はなんと言っても電源の事で、特に小生の様に球一点張りの者には高圧電源を如何するかが全てを決すると言っても良い位である。幸いHP 6521A(1000V, 200mA連続)2台とHP 6522A(2000V, 100mA連続)2台を入手できたので、測定の用途には連続規格は必要ないと思い改造して夫々を300mA, 150mAにする事にした。この50%増しの状態で2時間程使用したが、SCRがかなり高温になるので、後部レイディエーターの所をファンで冷却してやる必要があった。歪測定が多極管の場合スクリーン電源が必要になるが、大体200Vから500V位で、電流もせいぜい100mAあれば充分で、この程度ならば自作も簡単である。只、測定装置用電源にはスウイッチング方式の場合シールドが厄介であるので、勢い球を使ったシリーズ安定化方式となる。日本で最後までこのシリーズ安定化電源を製造販売していたメトロニクスも無くなってしまい、受信機関係の測定をする時一体全体どうやるのだと言う叫び声をあげたくなる。ツェナーダイオード(ズィーナーダイオード)の猛烈なアヴァランシェ雑音や最近の整流用ダイオードの極性反転時のスウイッチング雑音等々いずれ後程実測データを示す事になろうかと思う。特に放送関係のSN比の100dBを超す要求は使用可能な部品が極端に制限されるが、色々な半導体部品も雑音の点から再検討される運命にあるかも知れない。

HP 6520系高圧電源
1000V、2000V、4000V
3種ある。外観は同じ

以上の他にDUTの調整の為にどうしても必要なものが電力計と高周波の高電圧を測定出来るヴァルヴォル(昔「無線と実験」誌にVTVMと書いたら、格好つけるな、「バルボル」にしろと大変な御叱責、日本では真空管はValveでなくてVacuum Tubeが普通なのだが)で、電力計のほうはバード(Bird)の4310を、ヴァルヴォルにはHP 410CとRF用100:1ディヴァイダーを用意した。その他にはダミーロード(30dBダミーパワーアテニュエーターも使用)とレヴェル(?)調整の高周波用のヴォリューム位のもので、後はアイディアと行動力に上手く行かなかった時の色々な知恵の出し方、悪く言えば誤魔化し方が必須条件であろう。よく始めに結論や結果を決めて置いて、それにうまく合う様に実験を誘導したり、都合の悪いデータは出て来なかった事にする上、捏造したり、添削したりする輩がいるが、是だけは真っ平御免蒙りたい。
右:HP 410C アナヴォル(VTVM)
左:HP 3478A ディジヴォル 

バード 4310 50Wダミー
HP アッテネーター (HP 355)
HP プリアンプ (HP 8447A)

バードノパワーメーター HF用50W/100W切替
ノイズジェネ