JA1ACB こだわり無線塾



電力型高周波トランス
2009/5月 NEW!

 一寸趣向を変えてHF用のトランスの話をしておこう。と言うのは某局向けのワイドバンド昇圧トランスの製作でとんでもない苦労をしたので今のうちに書き留めておこうと言う魂胆があるからで、又最近コリンズのバラン(1:1型)を入手したのでついでに纏めて置く事にしたい。

 バランとしては同軸ケーブルを使ったコリンズ/W6TC型が有名であるが、殆どイムピーダンス変換は1:1か或いは1:1のトランスを2個使ったイムピーダンス比1:4のものなら眼を瞑っていても出来るが、ロンビックやT2FD用の様な600Ωや300Ωのイムピーダンス変換を必要とする物にはトロイダルコアを使用したモノが普通である。小生が見た最大の物は埼玉県所沢にあったOTHレーダーの50KW用の物で、同じ電力のパワーコムバイナー共々200KW 600Ωに変換していたと記憶しているが、化け物の様な油漬けの星型コアにテフロン管を被せた銅パイプが捲いてあった。我々が使用するンKW程度では大型のトロイダルコアにテフロン電線で充分で、それも50Ωの1:1ならば3.5MHzから30MHzをカヴァーするのは簡単である。ところが某局用の500W機の1:2.5捲数比の出力トランスで3.5MHzから21MHzをカヴァーしようとした所全く歯が立たず、幾ら確り撚り合わせても一次二次間の捲線の結合度が悪く、おまけに二次側に500Vの直流が掛かっているので1000V耐圧のテフロン電線を止める訳にも行かず、カップリングコンとRFCを使うのは業腹なので横に除けて置いて、噛り付いてでもとトランスをとやって見たが、周波数比6:1程度でも一次二次間の結合度を上げるのに大変な苦労をした。テフロン電線の様な厚い被覆で結合度を上げるにはシールド線を使うのも一方法であるが、捲線比1:2.5ではどうともならず思案投首、或る日ふと思い付いて一次線と二次線を2本づつに分けて組紐状に編んだ所一発で解決、目出度し目出度しとなった。基本的な撚り方は図81に示しておくが二次側が3本では6本に分割して編む事になるが、飽く迄も一次二次間の結合度を上げるのを目的にしている事を忘れないで欲しい。捲数比1:2位迄なら頭が混乱しないが1:3位になると、一次側1本に二次側3本、計4本なので何処を如何通したか、何処で交差させたか一次側に真面目に結合しているか、二次側同士がきちんと結合しているかさっぱり判らなくなり下手すると発狂寸前になる。なお二次側を単に束ねただけで組紐状にしたので行けるかと思ったがまともに行かなかった事を付け加えておく。なおこの「組紐法」は、小生考案の「電子的パスバンド同調」と同様特許とか実用新案になっていないのでどうぞ自由に使って戴きたい。写真xxに組紐状の捲線、写真xxにコリンズ1KWのバラン(1:1)の写真を掲げておく。

 最近の出力段は半導体化しているので出力が50Ω固定の物が全部で、勢いメモリーを使ったアンテナテューナーやアンテナカプラーが必要になってくる。それは良いとしても増力しようとすると如何してもパワーコムバイナーが必要になり、ここでも電力型の高周波トランスのお世話にならざるを得ない。パワーコムバイナーは2ポートのものが一般的であるが、この場合はどうしてもトランスを使う必要がある。機会があれば4ポートのものも説明するが、その場合は同軸ケーブルと外被の電流を停める為のフェライトコアとバランス用の抵抗が必要なだけで極めて簡単に作れる。2ポートの基本回路は図82で2個の50Ωポートが並列で25オームで、これを再び50Ωにするためにイムピーダンス比1:2(捲数比1:1.4)のトランスと平衡用の1:1のトランスが必要である。また2ポートの内の片側の入力が無くなった場合にイムピーダンスバランスをとるための抵抗も必要であるし、この抵抗は基本的には片方のポートの電力の1/4が消費出来る様にする必要がある。

 (続く)